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ボナール、大石芳野、クリムトなど

去年秋からいくつか見た展覧会を。
宮城県美術館は別に書いたから、その他の。

9月にピエール・ボナール展。
国立新美術館、わたしはここが好き。

ボナール展は、

19世紀末のフランスでナビ派の一員として出発し、浮世絵の影響が顕著な装飾的画面によって「日本かぶれのナビ」の異名を持つ画家、ピエール・ボナールの大規模回顧展が開催される。

 印象派に続く世代のボナールは、ゴーギャンの影響のもと結成されたナビ派に属し、繊細かつ奔放なアラベスクと装飾モチーフが特徴的な絵画を多く描いた。1890年のパリで開かれた「日本の版画展」を機に浮世絵の美学を自らの絵画に取り入れ、また同時期には象徴主義演劇とも呼応する、親密な室内情景の作品も制作。20世紀に入ると、目にした光景の印象をいかに絵画化するかという「視神経の冒険」に身を投じ、鮮烈な色彩の絵画を多数生み出している。

 本展は、初来日するオルセー美術館のボナール・コレクション約30点を含む国内外の優品130点超を一挙に公開。「日本かぶれのナビ」と称された日本美術への傾倒ぶりやボナールの絵画を彩ったミューズ・マルトを紹介しながら、好んで描いた動物たちも登場する油彩や素描、版画・挿絵本、写真など様々なジャンルを通じて、謎多き画家・ボナールの魅力に迫る。






「美術手帖」の紹介記事をお借りしました。



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写真をどこぞから引っ張ってきたので、不鮮明ですが。

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作品数が多く、充実した展覧会でした。
ボナールをまとめてゆっくり見たのは初めて。
確かにジャポニズムそのものの面白い絵もあり、ポスターなども良いと思いました。
しかし、この人、どうもかなりの人間嫌いのようで、多くの作品の人物はあらぬ方を見ていて、互いに視線を合わせず、カンバスのこちら側も見ない。鑑賞者を落ち着かない気分にさせます。
妻マルトって人も相当エキセントリックというか、変わってるようで、ポスターになっているのもマルトを描いたものですが、これなんかまだ元気そうなほう。
この人の絵で元気なのは、犬と猫。
猫はそのいたずらっぽさや、美しい姿がよく描かれています。
好きか、と聞かれればあまり好きではないけど、展覧会としてはちょっと面白かったという感想。



今年に入って5月に行ったのが、東京都写真美術館で行われた大石芳野写真展「戦禍の記憶」。
こちらは現役の写真家の展覧会なので、画像は控えます。
詳しくは



沖縄、コソボ、スーダン、カンボジア、ラオス、731部隊、広島、アフガニスタンなどの戦禍の痕、またその現在の姿を撮った150点の写真。
写真家としての確かさと、撮るべき人と光景を見る目の確かさで、写真を見る者に迫ります。ベトナム戦争でアメリカが散布した枯葉剤の影響を受けた一家の写真など、その表情は穏やかなのですが、強い印象を受けました。
戦地に行って写真を撮る、ということは、最近では非常にネガティブに批判をする人もいますが(SNSなどで)、起こっていること、起こったことの影響を知らせる、しかも写真のように写真家の意思で切り取りはしていても(またその意思のありようこそ大事なのだけど)、知らせることの重要性を感じます。



6月に行ったのが「クリムト展 ウィーンと日本1900」。
これもなかなか見ごたえがあり、面白かった。
クリムトそのものの作品のほか、イメージとは違う作品も多く来ていて、興味深く見ました。


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ボナールのもこれも著作権あるのでしょうね…
お目こぼしに預かれないかしら。
豊田ではまだやっているようだから、これ読んで行きたくなる人が絶対にいないとは言い切れないし、許して〜

公式HPには、

19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)。
華やかな装飾性と世紀末的な官能性をあわせもつその作品は、
いまなお圧倒的な人気を誇ります。
没後100年を記念する本展覧会では、初期の自然主義的な作品から、
分離派結成後の黄金様式の時代の代表作、
甘美な女性像や数多く手がけた風景画まで、
日本では過去最多となる油彩画25点以上を紹介します。
ウィーンの分離派会館を飾る壁画の精巧な複製による再現展示のほか、
同時代のウィーンで活動した画家たちの作品や、
クリムトが影響を受けた日本の美術品などもあわせ、
ウィーン世紀末美術の精華をご覧ください。




クリムトは、改めて絵の上手な人だな〜とわかった。
面白かったのは、ボツになったウィーン大学講堂天井画の下絵。
写真と「医学」の習作だけが現存し、この展覧会でそれを見たのですが、国立大学の天井画として、さぞかし物議を醸したのだろう、とか、これをナチスが没収し、あげくに燃やしてしまったとは…とか、この作品の不幸で数奇な運命を思いました。

壁画がもう一つ、ベートーヴェン・フリーズの原寸大複製。
こちらも素晴らしい。本物を見たいけど、複製でもじゅうぶんにすごい。
クリムト的なヘンなやつも出てくるし、クリムトといえば、という黄金やガラスの装飾的な彩色は美しいし、これはたぶんベートーヴェンも気を悪くしないだろうと思う。

公式HPでは、

全長34メートルを超える壁画《ベートーヴェン・フリーズ》は、クリムトが40歳の頃に手掛けた大作。黄金の甲冑で武装した騎士が幸福を求めて敵に向かい、楽園にたどり着くまでの旅路が絵巻物のように展開する。ベートーヴェンの交響曲第9番に着想を得たこの壁画は、天使たちによる合唱と、男女の接吻で締めくくられる。
金やガラス、真珠層などの素材を用い、輝きのなかに歓喜を表現したフリーズは、まさにクリムトの「黄金様式」の時代を代表する傑作である。
本展では、1984年に制作された精巧な原寸大複製を通じて、その壮麗さと迫力を体感していただきたい




意外と普通な風景画とか、クリムトといえば、思い出すような「ユディトⅠ」や「女の三世代」とか、ウィーン分離派のポスターとかも来ていて、見ごたえがありました。
ユディトがポスターになっているのだけど、このサロメ系のテーマは、よほど絵心を動かすらしく、多くの画家が手がけています。
美しい女が男の首を持っている、ってのが、どうも作家の琴線に触れるらしい。
元の聖書では、へロディアの娘が母親にそそのかされてバプテスマのヨハネを殺させたので、悪女はへロディアの方なのだけど。

というわけで、大混雑というほどではなかったけどわりと混んでいた中で、これだけ充実した作品展を見たので、ちょっと疲れました。
でも面白かった。

その後、宮城県美術館でエゴン・シーレを見たという流れでした。

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コメント

No title

絵心は持ち合わせておりませんが
クリムト作品は鉤十字の目に「退廃芸術」だったんでしょね

https://www.youtube.com/watch?v=nP47X3Thmyg
30何年前にテレ朝系で放映されました
同胞がドイツ兵に殺される場面を隠れて撮影するユダヤ人が登場します
外野の目には「見殺しにするのか」「自分だけ逃げるか」ですね
でも実際そういう場面に居合わせたら?
カメラマンもまた殺される可能性あって、彼が死んだら歴史の証人いなくなる
涙流しながらもシャッター切るのが心情でしょうね

戦場カメラマン、これは生死が浮き彫りとなるため、損な役回りです
ナパームの少女、素っ裸で走って来るキム・フックなどは、国に利用され
パイロットの人生も左右しましたが
それでも、一葉の写真が、世論動かす力は計り知れないと思いますよ

mathichenさん

仰るように、クリムトなどは見るからにナチスのお好みではないですね。
「フェルメールになれなかった男」ハン・ファン・メーレヘンという贋作者のことを書いた本(フランク・ウィン)がありますが、彼がフェルメールと称して描いた「エマオの食事」で、まんまとナチスのゲーリング元帥を騙くらかし大枚せしめたのだとか、フェルメールはわたしも好きだけど、ナチス好みでもあったようです。
そこいくと、ウィーン分離派などは「退廃芸術」になるでしょうね。

戦争写真を含む報道写真については、考えさせられます。
あざといセンセーショナリズムもあれば、知られずに失われたり蹂躙されているものを知らせようとする意思もあると思います。
切り取り方、被写体とのスタンスなど、写真から写真家が見えるものもあり、大石芳野などはそれがわかる写真家です。
キム・フックは、厳しく数奇な運命に負けずに、たくましく生きている人だと思います。それに、逃げる少女キムを撮ったのはベトナム人ニック・ウトですから、写真が訴えるものは、今も大変なインパクトがありますね。

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ふうちゃんp4

Author:ふうちゃんp4
Yahooブログから引っ越してきました。FC東京SOCIO13年目です。夫はジェフサポなので、時々フクアリにも出没します。下手クソですが、サポ旅行の写真もアップしたいと思っています。

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